三日月を見て、私はため息をついた。
「どうしたの?」
横で彼氏が呑気に聞く。
どうしたの、じゃないわよ、思い出さないの?!
と私は腹立たしく思う。
私はいつも三日月を見ると、幼い頃から思い出してたある場面がある。
きらびやかな服を来て、アラビアのお姫様のような格好をした大人の私。色とりどりの煌めく刺繍が綺麗で。
一番印象深いのは、薄い紫と青の間のような色の空に、異様に黄色い三日月が輝いていたこと。
私と一緒にいるのはアラビアのこれまた王子様みたいな格好をした男性。私と男性は踊っている。
そして、その男性というのは今、横にいる彼氏の顔と同じだったのだ。
私は恐らく前世の記憶なんじゃないかと思っている。
確かめようはないんだけど。
小さい頃からの記憶。親や、友達に話しても夢だと笑われて来たけど、高校で出会った彼を見つけて、驚愕。
・・・話しても私のこと、思い出してくれなかったけど、私は猛アタックして、彼と付き合えた。
だって、幼い頃から、素敵だって、思っていたんだもの。
「月乃ってたまにそういうふうに不機嫌になるよね」
彼氏が機嫌を取るように私を覗き込む。
「いいの、だって、言ったって仕方ないことなんだもん」
私が拗ねると、彼氏の腕の中に抱き寄せられる。
「ごめんね、僕が覚えてれば月乃にそんな顔させないのに」
彼氏には出会ってからと、付き合ってから、2回、私の夢の話はしていた。だけど、全然そんな記憶もないし、夢でも見ないと言われた。
「私が覚えてるからいいよ」
私は寂しそうに笑うと、彼にキスをされた。
彼氏が前世の人がどうかも分からないけど。
三日月の日になると強く幼い頃からの記憶が蘇る。
その記憶があったからこそ、今の彼氏に会えたのだから。
彼との時間を大事にしよう。
そして、いつまでも、この不思議な記憶は、私の中で大切に記憶の中に留めておこう。
1/9/2024, 3:50:52 PM