「さらさら」
彼女のサラサラとした髪の毛が、風に舞っている。
彼女とあと何度この場所に来れるのだろう。思い返すと本当に色々あった。だけど、その思い出の一つ一つには続きもあった。その物語の終わりが近づいていることに気がついたのは、ついさっき。そう、彼女は余命3ヶ月の命だった。前々から体調が悪そうにしていて、何度も病院に行くように言ったが、彼女は「大丈夫」と言って病院に行こうとしなかった。だけど、今日の朝、仕事の準備をしていた彼女が突然倒れて、病院に運ばれた。検査の結果は癌だった。医者によると、身体中にがん細胞が巡っていて、もう手遅れだそうだ。とても悔やんだ。無理やりにでももっと早く病院に連れていけば結果は変わっていたかもしれないのにって。だけど、どんなに悔やんでいても結果はもう変わることはないなら、残された時間を彼女と今までにないくらい楽しもうと決めた。それと同時に、もう1つ自分の中に決心したことがある。それは、彼女の前では絶対に泣かない。
5/29/2025, 1:02:15 AM