ともだち、親愛、大切。
それらに当て嵌まるものはと言われたら、それは友情だと僕は言う。
それに限らずとも、青春、恋愛なんてものも、元々は友情が基盤となって出来たものではないのだろうか。
なんせ学生時代、そういうものをしてこなかったから完璧にわかるわけではないけど。
午前八時。
振り分けとして“学生”という職業に属している僕を含めた同居人二人は、珍しく僕たち以外全員予定がある日の土曜日を過ごしていた。
「そういえば、佐伯くんって結構人見知りですよね。…いや、断じて嫌味とかそういうのではなくて、どうやって僕たちとここまで仲良くなれたんだろうって思って」
それはもはや嫌味じゃないか、と言いそうになった口を閉ざして考える。
どうやってなかよくなった、思えば共に時間を過ごすうちに自然と仲良くなっていったのかもしれない。
「わかんない。なんか自然とこうなってたっていうか……」
そう答えると、彼はくふふ、と笑った。
窓から吹き抜ける風が彼のふわふわの白い髪を靡かせて、それはまるでどこかの神話のようだった。
「やっぱりそうですか。ここの人たち、めちゃくちゃフレンドリーだから自然と仲良くなってるんですよねぇ」
からっと笑って、彼は言う。
さっきのような上品な笑い方じゃなくて、心の底から笑ったような、雨上がりの空のような、子供のような笑い方。
彼がこういう一面を見せてくれるようになったのも、そういえば最近だなと頭の片隅で思い出す。
最初は人見知りが激しくてまともに話せなかったっけ、なんて思いだして笑ってしまった。
僕と彼がこうなったのも、友情のおかげかな、と思う。
「そういえば久遠くん。駅前に新しいカフェができたんだけどさ、そこのパンケーキが美味しいって評判なんだけど、ふたりで行ってみない?」
「あそこのカフェ、僕も気になってたんです!是非行きましょ!」
7/24/2024, 10:25:34 AM