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【星が溢れる】
 夢を見ていた。長くて繊細な夢、だった気がする。何もかも覚えているわけではないが、彼が出てきたのは覚えている。僕の憧れの彼が。夢に現れた大好きな彼は、なぜかただただ悲しそうだった。真っ暗な空の下、彼だけがわずかに光っているのだ。黒で縁取られた大きな瞳に宿る星が、行く場所を失ったようにあふれていた。いつも見ている彼からは、どこか妖艶さをも感じるのに、夢の彼は違って見えた。脆く、切なく、どこかに危うさをはらんでいるような。でも相変わらずとても綺麗だった。
 なぜ泣いているのか尋ねると、彼は帰れないからだ、と言った。泣いているのにいつもと同じ声だった。
「帰りたい。僕が僕だった場所に」

 空にいるには、眩しすぎる。彼は空からこぼれ落ちてきた星だった。

3/15/2026, 10:40:16 AM