灰田

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入道雲を見ていると「夏」は、
幼い頃、図書館で読んだジュブナイルに描かれていた、王国のように思われる。

もう、本の題名も忘れてしまったけれど、
夏の「王国」は毎年律儀に巡って来て、心をワクワクさせた後、やがて別れの日には、切なく締めつけてくる。

夏の「王国」の入道雲は大いなる永久機関を隠した、不思議な機械の大船で、
あれに乗って夏の王女がスカートひるがえし駆けてきて、そして駆け去ってゆく。

悠長に見えて忙しない夏休みを、一緒に過ごそうとやって来る「王国」は、

油断してるとすぐ消え去ってしまう「夏休み」にも似ているかもしれない。

6/29/2024, 10:25:34 AM