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「ブニャッ!」
と足元から聞こえたので驚いて見ると、うっかり猫のしっぽを踏んづけようとしていた。
「スマン、痛かったか」
通じるわけもないが人語で謝っておいた。
「恨まないでくれよ、俺も気が動転してんだ」
そのまま真っ暗で細くて寒い路地を駆け抜けつづけた。この先には何が待っているのだろう。見つからずに電車に乗れたなら、途方もない田舎に行き着くだろう。あるいは、死んでしまうか。
死にたくないから殺したのに、俺は死ぬのか。人生なんとかやってきたと思っていた。そりゃあ他人よりはいくらかひどいこともあったが、それも含めて俺のもんだと大事にしてきた。
「今日で終わり、なのか?」
急に心細くなった。
死ぬとき誰かが横にいてほしいなんて過ぎた願いかもしれないが、せめてもう少しあたたかいところで死にたかった。
そんなことを考えていたらふいに後ろから銃声がした。撃たれた胸から赤い血が意味もなく流れているのが見えた。

11/9/2024, 12:34:59 AM