ののの糸糸 * Ito Nonono

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No.7『終焉』
散文 / 掌編小説

何もかもどうでもよくなって、わたしは高層ビルの屋上から飛び降りた。まるでプールに飛び込むかのように、頭上で両手を揃え頭からダイブ。

順風満帆な人生だった。いや、今も順風満帆で何不自由ない暮らしを漫喫している。誰もが羨む結婚をして、優しいパートナーと可愛い子供たちにも恵まれた。

だからこそ、怖くなった。順風満帆な人生が壊れることが。こんな幸せがいつまでも続くわけがない。経験したことがないから身をもっては分からないけれど、世の賢人たちはこぞって口にする。

飛び降りたはいいが、そこらのビルの屋上からとは違い、なかなか地面に到達しない。


落ちていく。どこまでも落ちていく。
真っ逆さまに落ちていく。

落ちていく最中(さなか)、真っ逆さまで見たものは……。


お題:逆さま

12/7/2022, 1:06:22 AM