27(ツナ)

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「クリスタル」

顔合わせの後、彼の家へ招かれた。
男の人の家は初めてだったのでとても緊張したが、肩の力を解そうと彼は私に冗談なんかを言って和ませてくれた。

私を部屋に通すと忙しそうにどこかへ行ってしまった。と思ったらバタバタと戻ってきた。
「あ、あの、紅茶は…お好きですか?…最近英国から良い茶葉が入りまして。」
「えっ、あっ、ええ。紅茶はとても好きですけど。あ!私もお手伝いしますよ。」
「いいえいいえ!お客様ですから、どうぞ座って少々お待ちを。」
嬉々として動く彼の勢いに圧倒されて、その場で手持ち無沙汰に待つしか無かった。

しばらくすると、大きなお盆にティーセットとお茶請けを乗せてどこか危なっかしい足取りで彼が戻ってきた。
「お、お待たせしました。…あのっ実は、紅茶と一緒にティーポットも購入したんですが、貴女に是非、これを見て欲しくて。」
「…まあ!素敵!まるで宝石だわ。」
紅茶が入ったそのティーポットは綺麗な切子細工のクリスタルガラス製で、陽の光を受けてキラキラと輝きを放っていた。
「実は、貴女の為に特別に取り寄せてみました。……喜んでもらえたようで、本当に良かった。」
「生まれて初めてこんな綺麗な食器を見ました。私のために、ありがとう。私は貴方の妻になれて幸せです。」
首筋を軽く搔く仕草をしながらポッと顔を赤らめる彼を見て、私はなんて幸せ者なのだろうと心が温まった。

7/2/2025, 11:08:53 AM