天井に蜘蛛がいる。
ここ数日、家の中で見かける蜘蛛だろう。
これまで、キッチン、トイレの入口、玄関などでエンカウントしている。
体長は、およそ3〜4センチ。
特に悪さをしてこないので放置していた。
今いるのは、寝室の奥。
およそベッドの顔あたり。
白い天井に何食わぬ顔で張り付いている。
試しにベッドに寝転ぶと、予想通り蜘蛛と向かい合わせの形になった。
天井にいる蜘蛛は、大人しく、動く気配がない。
スマホのカメラを起動させて、ズーム機能で蜘蛛を撮る。
それを検索にかけると、アシダカグモと出てきた。
名前も言いたくないアレを捕食してくれる益虫だ。
寝室で飲食をする趣味はないので、食べカスなどのゴミは無い。
アレが出ることは無いハズなのだが、何やら警護してくれているようだ。
「ここには何も無いはずだけど、何故いるの?」
天井のアシダカグモに向かって声をかけると、アシダカグモは長い足をカサカサと動かし、寝室のドアへと向かっていった。
そのまま出ていくのかと思いきや、ドア付近の天井で再び止まった。
やはりこの部屋に何かがあるらしい。
捜査が必要だ。
寝室にあるインテリア達を見て、あれこれ考えていると、天井にいたはずのアシダカグモの姿がない。
もしかして、警護完了の挨拶に来てくれたのだろうか。
はたまた、ドアの先に獲物となる何かを見つけたのだろうか。
ドアの先にある廊下へと向かうと、そこにもアシダカグモの姿はない。
なんと素早く隠れるのが上手いのだろうか。
足音も気配もないのだから脱帽である。
蜘蛛というのは、忍者の生まれ変わりなのかもしれない。
そう思いながら寝室へと向かい、ドアを閉める。
パタリと音を立て閉まったドアの表面に、黒い物が付いている。
出ていったはずのアシダカグモだ。
このドアは至って普通のドアであり、忍者屋敷にあるようなどんでん返し機能はついていないはずなのだが。
忍者の生まれ変わりは、長い足を動かすと、再びドアの隙間へと向かっていった。
やはり、ドアになにかがあるのだろうか。
一連の動作にも、再考の余地がありそうだ。
8/25/2024, 2:59:37 PM