霜月 朔(創作)

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生きる意味

私に生きている価値はない。
これ以上生きていても、
見苦しいだけだ、と。
自らの喉元に、刃物を突き付ける。

ふと。
庭の桜の木の花の蕾が、
少し膨らんでいた事を思い出し。
最期に桜の花を見てから、
この世に別れを告げようと、
ナイフを下ろした。

この世に未練など無い筈なのに。
私はこんな事を繰り返す。

ある時は、
教え子が文字を書けるようになる迄は、と。
またある時は、
後輩が仕事を覚える迄は、と。
そしてまたある時は、
借りた本を返す迄は、と。
人から見れば取るに足らないだろう、
些細な理由を見つけては、
さも大事の様に、自らに振り翳す。

私に生きている価値は無い。
しかし。
死を選ぼうとする度に、私は、
無理矢理、生きる意味を見つけては、
生き恥を晒している。

4/27/2024, 2:47:23 PM