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涙の理由

 5年前私は人型アンドロイドを作った。
他にも量産したかったが、作ったのは一体のアンドロイドのみ。
地球は戦争や環境破壊で生物が住みにくい星になった。
それでも人類は少数は生き残った。
生き残った人類は、新たな地を求め他の星へ行くものが
大半だった。
そして変わり者や、地球に居たい者だけが残った。

「博士、博士、朝です。起きてください」

 私がこのアンドロイドを作ったのは寂しさからだった。
何しろ人類はもうほぼ居ない。
地球居たものも病気や寿命やらで減ってしまった。
今は果たして生き残ってる者はいるのだろうか。
いやきっといるまい。もう人類はきっと私一人だろう。

 私もきっと先は長くない、だからアンドロイドを作ろうと思った。
材料から集めた。錆や部品の破損で使える部品が少ない。
そんな中やっと作ったのが、アンだった。

 最初はアンは機械だからか命令でしか動かなかった。
しかし、学習機能をつけたことで少しずつ心が育っていった。

『博士、博士。山に見えるあれは何ですか?』
「あれは笠雲じゃな、雨が降るかもしれん早く帰るぞ」

『博士、博士植物に似てる生物は何なんでしょうか』
「それはナナフシじゃな、擬態して生活しておるのじゃ」

アンは私にとって本当の子どものようだ。
だからこそ私は不安になる。
この子を人間の様にしていいものかと。
心があるから嬉しくもなる、だが心があるからこそ別れが耐えがたくもなる。

「のぅアンよ、私といて幸せかい?」

『博士?質問の意味が図りかねます?わたしは博士のお役に立つために私は作られたと記憶してます』

「そうだったのぉ。アンよ私は旅に出る長い長い旅じゃ」
『承知ました。博士どこへ行かれますか?
いつお戻りになりますか?』
「そうじゃな、私にも分からない旅なのじゃ」
『??博士もわからないのですか?』

きっとこの子は私が死ぬことを理解しないのだろう。
その方が幸せなのかもしれん。
 だがこの子はある日、死を理解してしまった。
一匹の鳥がケガしていた、アンは私に助け求めてきた。
私も可能な限り治療したがしかし死んでしまった。
そして初めてアンは生物は死ぬことを理解したのだろう。

『博士、博士あなたもいつか死んでしまわれるのですか』
「そうじゃのぉ、いつかは私も死ぬな」
『それは避けられないのですか?』
「避けることはできないのぉ」

その日からアンは雛鳥ようについて回った。
同時に少しずつ、私も死期へ近づくのが分かっていく。
最初は力が出なくって運動機能も落ち、食欲も落ちて、ついにはベットから動けなくなった。

『博士、博士今日は綺麗な花が咲いてました
博士も動けるようになれば見に行きましょう』

アンが約束してくる。
しかしここまでのようだ。

「私ここまでのようじゃ眠くてかなわん」
『博士、博士、眠らないでください。一人にしないで』

私の腕がどんどん濡れて冷たくなっていく。
あぁきっと私の大切な娘が泣いているのだ。
あぁアンよ泣かないでおくれ。
涙を拭いてあげなければと思うのにもう身体は動かない。
私の意識はここで途切れた。
私は世界で一番大切な娘を一人ぼっちにさせてしまう。
そして泣かせてしまった不甲斐ない親じゃ。

































『博士私は幸せでした。あなたの娘でよかったです。
博士私に心くださり、たくさんの思い出をありがとう』

人は死後お墓を作ると聞いたので、博士のお墓を作った。
博士に見せたかった花をお墓に供えた。

しかし博士一つだけ可笑しいのです。私はアンドロイド。
なのに目から冷却水が止まらないのです。

9/27/2025, 3:58:38 PM