せ〜んろはつづく〜よ
ど〜こまでも〜
保育園児の列車が目の前を通過する。
散歩中なのだろう、園児1人1人が紐をつかんで
先生が辺りを気にしながら歩道を歩いていた。
可愛い列車に周りはニコニコ微笑ましいとでもいうような優しさのある表情が多く、自分はその光景をボーっと見てるだけ。
どこまでも行ける
あの頃の自分もそう思ってその歌を歌っていた。
子供番組でも流れるみながよく知るその歌は
ワクワクする感覚になれるもので
未来が楽しみになれる曲だった。
それなのに
今の自分はボロボロで
仕事で体は疲れ果て
精神が参っていて
そんな状態で毎日家にと帰る。
「ねぇねぇ」
ふと園児が声をかけてきた。
え?と下に目を向けるとずいっと何かを食い気味に突き出される。
黄色くて綺麗な花で瞬きする。
「あげる!ママがねコレ渡すと笑ってくれたの!」
無邪気な園児の言葉にポロリと涙が出る。
笑わなきゃ、せっかく笑ってくれると思って渡してくれたのに止めないと。
「すみません!」
一人の先生が慌ててやってくる。
園児も不安げな顔をして先生と自分の顔を交互に見る。違うのだ、謝られる必要はないんだ。
「優しさが嬉しくて…泣いちゃったんです」
君はすごいね、ありがとう
そう言うと園児はえっへんと笑った。
「…散歩中なのにすみません、もう大丈夫です」
先生に笑うとホッとしたように頷き園児と他の園児達の方へと帰っていく後ろ姿を見送る。手には先ほどの花、そうだコレは押し花にしよう。
押し花にした後は栞にして
好きな本を読むときに使おう。
今日の思い出として
明日をこの先を生きる糧として。
「うん、もう大丈夫」
胸をトンと勇気づけるように1回叩き空を見る。
快晴で羊雲などはないその空は
背中を押してくれているような気がした。
どこまでも果てしなく続く道や空、海。
どこまでもというものは色々ある。
けれども自分が心に強く残ったものは
どこまでも綺麗な心で人のために何かが出来る
純粋なあの子の笑顔だった。
お題【どこまでも】
10/12/2025, 6:23:31 PM