300字小説
君がくれるモノ
「ただいま、スラリン」
声を掛けると廊下の奥からふにふにと透明のゼリーのような物がやってくる。
僕のお世話役のスラリン。パパとママの研究所の人工生物の失敗作らしい。
「おやつは?」
聞くと触手を伸ばして、僕の手を指し、ふりふりと振る。
「はぁい」
僕は洗面所に手洗いうがいをしに向かった。
おやつはバナナマフィン。晩御飯は煮込みハンバーグとコーンスープとサラダ。お風呂から上がると濡れた髪にドライヤーをかけ、寝る時間には手を引いてベッドに連れていってくれる。
布団をリズミカルに叩く、優しい音。形の無いスラリンが一番たくさん、僕が欲しい形の無いモノをくれる。
「おやすみ、スラリン」
明日の朝はフレンチトーストが良いな。
お題「形の無いもの」
9/24/2023, 11:04:17 AM