平凡な「夫婦」の目の前に、一匹の悪魔が現れた。
時間帯は夜で、男はベッドで寝ている。
女の方だけが目撃した。
「そんな男で一生添い遂げる気か。もっと裕福になりたいだろう。途中で捨てちまいなよ」
「そうね、その方がいいわね」
女の方はすんなりと了承した。
悪魔はケケケ、と笑った。
男は一途だが、女の方はあっさり。
夫婦の関係は、こんな風にあっさり切られるものだ。
「良い男に、紹介してあげるよ。来な」
悪魔は手を差し伸べ、夜空のもとでデートをすることにした。しかし、女はそれを断った。
「どうして断る?」
「たしかに、この男は貧相な性格よ。おそらく5年がそこらで飽きてしまう。でも……」
彼女は、手を伸ばした。
「『これ』以上に良い物なんて、要らないの」
「ちっ、これだから人間は」
悪魔は開け放たれた窓から退散した。
男のモノは長いほど魔除けになる。
女の夜もそれで長くなる。寿命も長くなるのだ。
11/23/2024, 9:18:31 AM