手ぶくろ
目の前はカップルや家族連れでごった返していて、年末を感じさせる。
賑やかな街とは裏腹に私はひとり恋人を待っている。
分かってる、年末で仕事が忙しいことくらい
でも、自分だけこの世界に取り残されてしまったようで心が寂しいの
「寒いな…手ぶくろ持ってくれば良かったな…」
そんな呟きも楽しそうな街の雰囲気にかき消されていく。
もうどこかカフェにでも入って待っていようかとスマホをポケットから取り出そうとした時
「っはぁはぁ、ごめん!遅くなって!!」
いつも私よりうんと背が高くてつむじなんて見えないけど、息を切らして膝に手を置いて呼吸を整えている彼のつむじが愛おしい
あんなに待たされて冷え切っていた身体が会えただけで熱くなるこの現象は何なんだろうか
しばらく見つめていたつむじを押してみると
「手冷たっ!ほんとごめん、待たせて…」と言う彼がそっと手を包んでくれる
私はもう大丈夫
貴方が暖めてくれるから
もう手ぶくろは必要ない
12/28/2023, 8:20:24 AM