今日もやらかした。
また愛するあなたを傷つけてしまった。
己の生涯をかけて愛すると誓った妻との間に生まれた、この世でたった愛おしい一人息子。
妻と息子、愛する家族を守る為に自分なりに努力していたはずだったのに、突然降り掛かった、予想もしない悲劇を境に私の家族はバラバラになってしまった。
妻は夢の世界に連れて行かれたかのように眠り続け、強い人だったはずの母は戦いに敗れて命を落とした。
唯一守らなければならない存在だった幼い息子は、その小さな身体に世界を揺るがす程の恐ろしい力が秘めていることが判明した。
息子と同じ年齢だった頃、剣すらまともに振れなかった自分とは天と地の差で、初めて握った剣であるにもかかわらず、一瞬で、気がつけば、刃の先は私の喉仏に向けられていた。
以降、息子が化け物にしか見えなくなった。
剣神に愛されている息子は決して悪くない。
才能も力も何も持たなかった平凡で非力な自分が悪い。
ただ、剣聖の使命と重過ぎる責任の歯車に組み込まれてしまった我が子をそれらの重みから引き剥がしたいだけなのに、現実は一向に進展しない。
寧ろ親子関係は悪化の一途を辿っていき、妻との宝物だった我が子は闇の沼に嵌っていく私とは真逆の、ただ光の道のみを突き進む、王国最強の英雄となった。
そして今日もあなたを見る度に憎しみと妬みの言葉をぶつけてしまう。
本当は言いたくないのに、口を開けば汚い言葉が勝手に飛び出してくる。
英雄の皮を被ったあなたは微塵も揺らぐことなく、私と同じ色の瞳で、ただ無機質にわたしを見つめる。
違う。そんな目をされる未来などあなたが生まれた時から望んではいなかった。
遠い過去に突き放した息子の背中が手をいくら伸ばしても触れられない程に遠ざかっていく。
待ってくれ……!
そんなことを言いたかった訳じゃない……!
本当は……あなたのことを……
愛してる、のだと。
嗚呼、今日も伝えられなかった……
2/12/2026, 6:05:46 PM