ある少女の部屋の片隅で、一体の髪のキレイな市松人形が静かに佇んでいました。
その人形は少女のために買われ、始めの内はとても可愛がられていました。
しばらくして髪が伸びてくる様になってからは、少女は気味悪がり、触らなくなってしまいました。
ある日のこと、少女は人形がいつもと違うことに気づきました。
なんと、長かった人形の髪が短く切られていたのです。
そのことを両親に報告しますが、不思議がるばかりで、何も分かりませんでした。
不気味に思いつつも、特に何もすることはなく月日が経ちました。
その間にも人形の髪がどんどん伸び続けました。
少女は思いました。
この人形を監視すれば、髪が短くなった理由が分かるのではないかと。
それからというもの、少女はずっと人形を監視しました。
ある日、監視の疲れで寝てしまったときのことです。
シャッキン、シャッキン、シャッキン。
なにか金属がこすり合う音で目が覚めました。
少女が目を開けると、とても驚きました。
なんと人形が、自分で髪を切っていたのです。
それを見て少女は恐怖ではなく、怒りを覚えました。
そして少女は人形の持っていたハサミを奪い取り、そして―
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「そして、その人形の髪を切ってあげたの。だって雑に切って、キレイな髪が台無しになっていてね。許せなかったのよ」
「へえ、それが初めての体験なんだ?」
「そうなの。うまく切れなかったけど、それでも喜んでくれてね」
「それが散髪屋を始めた理由?」
「そういうこと」
少女は客と談笑していた。
少女は慣れた手つきで、客の髪を切り上げていく。
「よし完成。鏡で確認してみて」
「お、いい感じ。ありがとう」
そう言うと、客は満足したようにお礼をいう。
「下ろしてあげるね」
そう言って少女は、客の小さな体を抱えあげ、椅子から下ろす。
「いい出来だよ。他の人形たちにも宣伝しておくよ」
「ありがとう。また来てね」
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ここは人形専門の散髪屋。
この散髪屋は、部屋の片隅で営業しています。
この散髪屋の評判を聞きつけ、沢山の人形がここに訪れ、そして満足して帰っていかれました。
髪でお悩みの人形の皆様。
どうぞ、この散髪屋にお越し下さい。
あなたのことを、この部屋の片隅でお待ちしております。
12/8/2023, 9:42:53 AM