あの日見た虹は、天に向かって真っ直ぐに伸びていた。虹の途中だと言えば、確かに中途半端だ。他の人から見れば、本当にそこに虹があるのか分からないかもしれない。太陽の反射で七色に光る雲の幻影と言ってしまえば、それもそれで夢のように綺麗だろう。
けれども、あれは間違いなく虹だ。空に置いてかれた極彩色の梯子に私たちは夢を見た。
「あの虹は、龍が登る時に描いたんだ」
「あの虹の向こうには、天使がいる花園が隠れているよ」
本当は、虹の彼方には不思議の国があって、青い鳥が知恵と勇気と心を与えてくれるらしい。でも、あの時の私たちには興味が無かった。とにかく、私は虹の尻尾を持った龍の飛び立った後を夢見た。友人は虹の門をくぐって天使と花冠を作る夢を見た。
「虹の漢字は龍を元に生まれたって、辞書に書いてあったんだ。すごく格好良いよね」
「ふうん。雨の弓っていう響きだから、虹には弓矢を持った天使が住んでいるってパパから聞いた。とっても可愛らしいでしょ」
それぞれの意見に頷きはしなかったが、虹を見ながら互いの夢を語り合ったあの時間は、今でも七色の夢中にいるようだ。
(250222 君と見た虹)
2/22/2025, 1:12:18 PM