お題:【優しさ】
『▒▒▒▒』
三葉虫のような姿をした羽虫はこちらを振り返った後、顔を歪めるように微笑む。
歩み寄り、脚を伸ばして、私の頭へと抑えるように触れる。
数秒の空白、羽虫の脚は右へ左へと揺れ動き、羽虫はそれで満足したのか、一言『▒▒▒▒▒』と鳴いて玄関から出ていった。
それを冷めた目で見送っていると、背後からもう一匹の羽虫が鳴く声が聞こえてくる。
そちらを振り向けば、羽虫がテーブルの上、更に詳しく言うなら私の座る席がある場所へと、出来たてなのであろう料理を運んでいた。
『▒▒▒▒▒▒▒▒』
羽虫の言うことは無視して、運ばれてきた料理の中身を見る。
その内の一つに私の苦手な野菜が入っていて、羽虫を責めるように見つめれば、何らかの意味が込められた鳴き声と共にたじろぐ。
……容姿は完全に化け物なのに、こんな風に振る舞われると少し申し訳なくなる。
化け物は化け物らしく、常にその心であって欲しいものだ。
じゃないと、理解するのも難しい。
1/27/2024, 11:32:56 AM