灰燼

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エアコンが点けっぱなしの部屋でスマホのアラームが鳴り響いている。一人の男が気怠そうにタオルケットをめくり起き上がる。
外ではセミが鳴き、空には入道雲が浮いている。何をするでもなく外に目を向け、入道雲がいくつも重なっては離れていくのをただ眺めていた。キャンバスに描かれたような雲に吸い込まれそうな感覚に陥る。
夏特有の心が躍る様な心地とほんの僅かな寂寥感が胸に溢れては消えていく。
男は無性にその場所から逃げ出したくなり、重量感のある入道雲に手を伸ばし、雲を掴もうとした手が虚しく空を切った。

6/30/2024, 4:46:04 AM