はっさく

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[big love!]

 私はそう名付けられたある農家がとった一枚の写真を見上げている。
それは、親猫が自分より一回りいや二回りも大きい猪と対峙する姿だった。親猫の背後には、まだ目も開かないような小さな子猫がいた。
親猫の眼は片方の牙が欠けた猪をしっかりと見据えていた。その瞳に私は未来への希望が宿っているように感じた。

 今日も山の畑の世話をしようと早朝に山に入った時、今まで見たことのないような光景が見えた。
そして思わず、わしは手に持っていたハサミを落としてしまった。
そこには、大きな猪と猫が対峙していた。猪の眼は血走っていた。猪が持つ一本の牙は欠けていて、今までの先頭の証のようにやけに白く見えた。対する猫は、どこにでもいそうな茶トラだった。
わしは猪側から顔を覗かせてしまったので猫の瞳がよく見えた。瞳は真っ直ぐと猪を見据えていた。なぜ、猫は勝てない闘いを挑むのだろうかと疑問に思った。猫は、リスクは犯さずこういう場合一目散に逃げるはずだと思い、ふと猫の後ろ側に目をやった。
そこには、まだ目も開いていない子猫が3匹いた。
途端に腑に落ちた。
(ああ、これはー。)
わしは野菜の経過観察用に持ってきていたデジカメを構えて、震える指でシャッターをきった。

「カシャ」

大きなシャッター音が鳴って猪がこちらを向く。
その隙を見逃すまいと猫が猪に飛び掛かるのが見えた。
わしは、生き残るために使い古した身体を動かした。
毎日、農作業をこなしているおかげでまだうまく動いてくれた。
母猫の闘志が籠った鳴き声をバックにわしは子猫を3匹手で掬い上げ、近くに留めていた自分の軽トラに乗り込んだ。そして、車を走らせたー。


[big love!]
その写真には2枚目があった。
小さな子猫3匹が畳の上でじゃれついている写真だ。
その2枚目を見て私は思わず顔を綻ばせた。






4/23/2025, 10:12:03 AM