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こうして貴方に手紙をしたためるのは初めてね
50年も連れ添ってなんで今更って思うでしょう?

私、貴方のことが心配で堪らないの
頑固で、人に頼るのが苦手なのに、寂しがりな貴方
私が居なくなったらどうなっちゃうのかしらって

だけど私、貴方がいなかったらきっとダメになってしまうと思うの
滅多なこと言うなって貴方に怒られてしまうわね
でも本当の事よ、私貴方のことが好きで好きで堪らないもの

だから、貴方には申し訳ないけれど
少し安心してる自分も居るの
私が先で良かったって

私たちの思い出が、きっと貴方を奮い立たせる。
私たちの絆で、貴方はきっと私を忘れないでいてくれる。
私たちの宝物が、きっと貴方を支えてくれる。

何より貴方は、私が選んだ強くて優しい人だから。

愛してるわあなた、またどこかで、私を捕まえて。


蝉時雨が響き渡る部屋
私は母の丸くて丁寧な字で綴られた父への最初で最後のラブレターを読み終えた。
縁側に座る父は、母の好きだったお酒を呑みながら

「今日の日差しはしみるなぁ」
と目頭を抑え俯いた。

短い闘病期間、母の口癖は
「お父さんをよろしくね、愛してるわ」
どんな時も、真っ直ぐな愛を伝えてくれる人だった

「…最期くらい恨み言を吐いてくれよ…」

鼻をすする音と一緒に、そんな言葉が縁側から聴こえた。



【日差し】



あとがき

私もこんな素敵な関係築きたいなぁ
きっと手紙に各時間も勿体ないと思うほど
口で、態度で、愛を伝えて来た人なんでしょうね
そんな人に愛されちゃう旦那様も
きっと素敵な人なんでしょう、憧れちゃうね


7/2/2024, 4:26:02 PM