ティーバッグを使ったロイヤルミルクティーの淹れ方をご存知だろうか。紅茶を嗜む人からするとほんの少し眉を顰めたくなるようなレシピかもしれないが、私にとっては母と受験にまつわる思い出の飲み物だ。高校3年の冬、迫る入試に始終ガルガル吠えていた私はちょっとしたことでよく母に当たっていた。そんなちっとも可愛げのなかった私に、母は毎夜そっと勉強机に特製のミルクティーを差し入れてくれたものだった。もっとも当時は、カフェインで寝つきが悪くなるわ夜中にトイレに起きるわで、ありがた迷惑にしか思っていなかったけれど。母の愛に気付くのはいつだって数十年越しだ。大袈裟な愛情表現をする人ではなかった。だけど母がせっせと植えた種は、時折ふとしたきっかけでふわりとやさしい香りの花を咲かせる。今夜は温かい紅茶を淹れよう。そして、たまには実家に電話をしようかなと、遠い故郷を想い月を見上げる。#紅茶の香り
10/27/2024, 1:11:30 PM