『君は今』
「パカッ」蓋には湿った海苔が張り付いている。
少々米を詰め込み過ぎたようだ。腕時計に目をやり、ちょうど息子も昼休憩くらいだろうと思い、メインの海苔が同じ状況になってはいないか不安になる。
朝明け、ひんやりした空気に挫けそうになりながら、スマホのスヌーズを止める。今度こそはと、妻を起こさないように静かに起き上がる。
スリッパをパタパタ鳴らしながら台所に向かい、天板に両手をつき、大きく息を吸ってからフーッと吐き出す。
フライパンに油を注ぎ温める間、ちくわに包丁を斜めに入れる。ボウルに入れた薄力粉、青のり、水を混ぜ合わせ、素早くちくわを潜らせ油の中に放り込む。
卵に出汁と多めの砂糖を入れて焼き、冷凍食品の鶏の唐揚げを温め、ほうれん草は電子レンジで加熱し味をつける、きんぴらごぼうは昨晩の残りが冷蔵庫に入っている、鰹節はフライパンで炒り醤油をかけておく。
楕円形の弁当箱に、米、鰹節、海苔の順に重ね、その上の片側に、ちくわの磯辺揚げ、卵焼き、鶏の唐揚げ、ほうれん草のお浸し、きんぴらごぼうをきれいに並べていく。最後、たらことマヨネーズを端に添えた。
「よしっ、できた」
昨晩、息子は中空を見つめながら、「学校が楽しくない」と呟いた。そういえば、ここ最近うかない顔をしていた。俺は「無理に行かなくていいんだぞ」と伝えるが、「そういうことじゃない」と息子。
「父さんに何かできることはないか?」
息子はしばらく逡巡した後、「久々に父さんが作るのり弁食べたいかも」
「そうか、分かった。明日は久々に父さんが弁当つくることにしよう」
「ん」
これ以上は父親と話すことはないらしく、早々に自分の部屋に引っ込んでいく。
翌朝、息子は弁当箱を掻っさらうようにし、学校に向かって行ったーー
今、息子はどんな気持ちで弁当を食べているのだろうか。誰かと一緒なのか。一人なのか。父の心配が弁当から伝わってしまっているだろうか。
のり弁、美味しいか?
2/26/2026, 2:38:14 PM