夏の雨

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「月の神様………」
両手を合わせる。すると、微かに月が光った気がした。
「お願いです…どうか……ッどうか弟を…助けて…」
ガチャンッ「何やってんだ?おい。」
乱暴にドアが開いたと思ったら、お父さんがこちらを睨む。
「月の神様だぁ?そんなもんねぇーんだよ。お前は俺の言うこと聞いてれば…」
「弟は?弟は今何処にいるんですか?!」
「…あぁ、アイツは地下に居る。死んではねぇ。」
よかった……安堵のため息が出たが、まだ安心ではない。ここから出ねば。
「そろそろ夕飯の時間だな。お前なんか作れ。手を抜くと…」
「っ………は、い…」
そう言うと、満足そうに笑みを浮かべ去っていった。

「…………」
食材を切りながらどうしようかと考える。お父さんは部屋で寝ている。今しか瞬間がない。
「スゥー…月…月よ……」
そっと呟くと、部屋全体が明るくなった。
「??」
自分の体を見てみると、なんと光っていた。
「なに、これ………月よ、お願い。」
両手を合わせるともっと明るくなる。
「弟を……地下から出して…。」
目を瞑り、お願い…と全身の力を込めて祈る。
すると明るさが消え、変わりに弟がいた。
「?おねえちゃん…!つきはおねえちゃん!」
「っ!つきと!」
ギュッと手を握ると、少し震えている。怖かったんだね……。
「…月斗、ここから出___」
「なにやってんだ?」
っ!お父さんがドアの前で立っていた。
「逃げようとか思ってないよな?そうだよな?だって俺の娘なんだから…」
「違う!アンタなんかの娘じゃない!」
「?!お前そんな舐めた口聞いてると…」
「月斗、一緒に言って。月よ!」
「?月よ!」
そう叫ぶ。自分達の体が光ってくる。
「は?!どっどういうことだよ?!」
「月の神様よ!」
「つっ月のかみさまよ!」
「ここから…自由にして!」
「じゆうにして〜!」
その瞬間、眩い光が全身を包み、視界が暗転した。




自由になったのは月のおかげだ。
「…月よ、ありがとう。」

#月に願いを

5/26/2023, 10:38:53 AM