かつて、純白だった色は黄みがかり、艷やかだった光沢は失われた。
色鮮やかだった刺繍は、色褪せて不鮮明になった。
でも、これは最愛の妻から、初めての贈り物だった。
遠き故郷の私の母に逢うために、彼女自ら赴き、初めて教わった刺繍だった。
時を重ねた繊細で美しい刺繍を施されたハンカチは、真新しいものとも違う良さがあった。
そのハンカチには、華やかさは無い。ただ、洗練された品の良さが在った。
もう使うことは難しいが、今でもクローゼットで大切に保管している。
8/17/2023, 3:57:35 PM