小絲さなこ

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「警戒心が強過ぎる君を」



君は警戒心が強過ぎる。
少しでも近づくと逃げてしまう。
まるで小鳥のように。

君を初めて見た時の衝撃は忘れられない。
ある放課後、居残りさせられていた時のことだ。
どこからか聞こえてきた美しい歌声に誘われるようにたどり着いたのは、音楽室だった。

そっとなかの様子を窺う。
ピアノを弾きながら歌う君に目を奪われた。

あの光景が忘れられない。

どうにかしてお近づきになりたいと思っているのだが、うまくいかない。


大勢の生徒たちに混じっていても、君の声はすぐにわかる。
まるで鳥の囀りのような美しい声だから。
だが、その声のするほうへ視線を向けても、なぜか君の姿を見つけることが出来ない。


君は警戒心が強過ぎる。
別に取って食おうというわけではないのに。

やっぱり、初対面であんなこと言ってしまったからなのだろうか。




────鳥のように

8/21/2024, 2:33:40 PM