閉め切ったカーテン。大して広くはない部屋。質素で無機質なベッドやテーブルや椅子が置かれている、生活感の薄い中でケージの鉄色がひとつ異彩を放つ。
なるべく大きなものを選んできたけれど、それでも少しばかり狭苦しかった。
背中を丸めて脚を抱え込み、正体を確かめるように首輪に触れながら、あなたはじっとこちらを見上げていた。まるく見開かれた瞳は現状を何も理解してはいなかった。
しっかり固定されたケージは内側からは持ち上げられない。扉も鍵がなくては開けられない。
その鍵はわたしの手の中にある。首輪の鍵も同様に。
どうして、とちいさな声が問うた。どうしてこんなことを。自分はなにかしてしまったのか。
不安げで、頼りなく震えて、あなたは次の瞬間にわたしがドッキリ成功の札でも掲げるのを期待しているようだった。
どうして。────負の感情ではない。あなたを憎んではいないし嫌ってもいない。かといって正の感情もなかった。
あなたを手元に置いておきたいだけ。すべてを管理して、わたしがいなくては生きられないようにしたいだけ。好きじゃなくてただの独占欲だ。
檻の隙間から手を差し伸べて頭を撫でたら、あなたは怯えた顔で身をよじらせた。
3/25/2023, 3:33:27 PM