嵐が来ようとも
急に雲行きが怪しくなってきた。風が強く吹き始める。
雨がぽつりときたかと思うと、激しく降り出した。
ゴロゴロと雷が遠くの方で鳴っているのが聞こえる。
車が水溜りの上を通ると、バシャンと水飛沫がこちらに来た。
「うわっぷっ、びっくりしたぁ」
水に濡れても平気だけど、急だと驚いてしまう。
ごぉぉぉと風がうなっている。
「風さん、今日はすごく強いね」
「そうなんだ、今日は機嫌が良いんだー」
木々をたくさん揺らしていく風さん。
風さんが通ると、葉っぱが大量に落ちてくるからすぐにわかる。
「雨さん、今日は悲しいことあったの?」
「聞いてよ、雲さんと喧嘩したの」
さらに雨が強くなった。仲直りしたいけど、今、雲さんは機嫌が悪いらしい、雨さん曰く。
しばらくはそーっとしておいてた方がいいと思う。
「雷さーん、音が怖いよー」
「えっ、なーんーてー、聞こえなーい」
ピカッと激しく光、大きな音を立てる。それが、空中に響き渡った。
そんなに音を出すから、聞こえないんだよ。
何回か声をかけたけど、やっぱり聞こえない。まともに会話できない。
「風さん、雨さん、雲さん、雷さん。四つ揃ったってことは――」
今日はみんなでパーティーをするようだ。
別にしてもらって、構わないだけど。
周りに迷惑をかけないようにしてもらえたら、嬉しいといつも思う。
風さんが吹けば、僕らは飛ばされないように粘るのが大変になるし、ボロボロになってしまう。
雨さんが降れば、たくさんお水を飲めて嬉しいけど、お腹がいっぱいになってしまって、苦しくなっちゃう。
雲さんが来れば、雨さんとすぐ喧嘩しちゃうし。
雷さんが音を立てれば、バチバチと火花が散って、木さんが燃えてしまうことがある。
四つ揃って、嵐だ。
「雑草さん、飛ばされないように気をつけてね」
風さんがそう言って、僕の上を通り過ぎていく。
飛ばされないように踏ん張る。追い打ちをかけるように雨さんがきた。
「雑草さん、話聞いている?あ、雲さんが来た、じゃぁねっ」
聞いているけど、それどころじゃない。
土がやわらかくなってきて、踏ん張るのが難しい。
「雑草さん、みてみて、一番大きな音‼︎」
地面が揺れるくらい大きな音が広がった。木さんが怯えている。
近くの電柱に当たって、バリバリと音がしていた。
あれにはなりたくない。怖い怖い。
「嵐が来ようとも、負けないぞっ」
傷だらけでボロボロになっても僕は負けない。粘り強く生きるぞ。
7/29/2023, 1:46:41 PM