ルーティーンというものがある。私の場合は、眠りにつく前に単語帳を眺めながら、月を撮って送ることだろうか。
まだ、この国の言葉に慣れていない。学問の都合で渡った「海の向こう」で、私はいまだに意思疏通すらできないのだ。せめて単語だけでも覚えておかなければ、という思いで、まずは渡ってくる前に本屋さんで買った易しめの単語帳を、頭に叩き込む。
そして、合間に月を眺める。休憩がてら、満月も三日月も、新月の一歩手前あたりの月も楽しむつもりでいる。そして、撮る。一枚、ブレの無いように、なるべく自分の見ているものと同じ月になるように撮る。
送り先は、地元の親友だ。
同じ言葉でも、人によって思い浮かべるものは違う。例えば、さっきの「月」という単語に対して、西洋的な魔女や黒猫を思い浮かべた人もいれば、日本的な縁側での十五夜なんかを思い浮かべた人もいるだろう。月の模様がウサギに見えると言う人もいれば、私の渡ったこの地では、カニに見える人も、髪の長い女性に見える人もいるらしい。
そんな多種多様なイメージがある中、それが偶然にでも、自分と同じイメージを思い浮かべる人がいたら、ちょっと嬉しいかもしれない。
「そっちの月は今日も綺麗だね」
「どう思った?」
「ロケットで行きたい。旗突き立てたい」
「私も!!!一緒に行こうね!!!!!」
「そっちで頑張ってね、宇宙工学」
「頑張る、君も情報工学頑張れ!!」
……同じものを見れているように感じられて、嬉しいかもしれない。
11/2/2024, 2:19:47 PM