いろ

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【日差し】

 薄暗い牢獄の格子戸から、太陽の光がうっすらと差し込む。この牢獄に囚われてから、もう何度目の夜明けだろうか。こんな場所にまで太陽が差し込むのだと思うと、乾いた笑いが喉の奥から込み上げた。
 君を殺した感触が、手のひらにこびりついて離れない。罪を犯したことを後悔するつもりはないけれど、自分の罪を忘れるつもりもなかった。
 何度も何度もごめんと謝りながら、殺してほしいと泣いた君の声を、夜が明けるたびに反芻する。死者のことを忘れる時は声から忘れるものだなんて、昔なにかの本で読んだから。
(ああ、馬鹿みたいだ)
 もうこの世界のどこにも君はいない。それでも太陽は毎日昇り、夜は明けてしまう。君がいなくなっても、世界の構造は何一つだって変わることはない。それがひどく悔しくて、悲しくて、馬鹿馬鹿しかった。
(君のいない世界に、光なんてあるはずないのに)
 柔らかな日差しから逃げるように、牢獄の一番壁際の隅で膝を抱えた。太陽の光なんて、君を殺した僕には相応しくないのだから。
 頰を伝った雫が、冷たい牢獄の床を無機質に濡らした。

7/2/2023, 12:40:21 PM