まにこ

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常に心を閉ざしている子どもだったと大人になってから散々親から聞かされた。
A子は過去に思いを馳せる。
確かに辛いことや悩み事があったら、帰宅して誰にも打ち明けずにすぐにトイレに閉じ篭っていたかもしれない。
まるで貝殻から一切出てこないアサリみたいだ。
当時は幼いながらも心を開くやり方が恐らく分からなかったのだろう。
無理矢理こじ開けようとすればする程頑なに閉じていくアサリ。
熱して殺してパカッと開いたのを人間たちは美味しくいただく。
人間の貝殻の場合はどうやって開けたらいいんだろう。
力でこじ開けようとしたり、火で炙ったりしたところでそのまま死滅してしまうだけだ。
最終的に自らの意思で内側から貝殻を開けることでしか、本当の意味で心を開くことはできない。
私たちは人間なのだ、面倒くさくってどこか愛おしい生き物。
貝殻からようやっと自力で出てこられたA子は、自らをそっと抱き締めた。

9/5/2024, 9:30:25 PM