星乃威月

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窓越しに
アイスクリームを食べようとしたら
羨ましそうに眺めている子供と目があった

一瞬時が止まった
大の大人が
小さな子供を目の前にして
アイスクリームを頬張っていていいものかと

『こっちは暑いんだ
 休みの時ぐらい食わせろよ……』
と思ったが
もしも食べる余裕もないくらい
子供が貧しくて
アイスクリームを食べてる人の姿を見ることで
暑さから免れようとしてるのであれば
果たしてそれはいかがなものかと……

「あっ‼」
子供の叫び声と共に
子供の視線の先へと目で追うと
アイスクリームが服にこぼれていた

「あっ‼」
慌てる俺
時は既に遅し
服にベッタリとこびりついたアイスクリームは
拭き落としたくらいでは落ちそうにもなかった

「やれやれ……」
俺は子供の視線に根負けして
ジェスチャーで店の中に来るよう合図した

「おじさん、こぼしちゃったね~
 どこ見てたの?」
純粋なキラキラした目で見つめたくるから
言うに言い出せない

「ま、まぁいいから
 好きなアイスクリームを頼めよ
 食べたかったんだろ?」
ふと何気なく子供に問いかける

「えっ⁉いいの~⁉
 おじさん、有難う‼」
キャッキャとはしゃぐ初対面の子供と
席を共にする

ここは深く聞かない方が身のためだろう……
とブラックコーヒーをすすりながら思うのだった



ーこぼれたアイスクリームー

8/12/2025, 7:48:08 AM