君と一緒に死にたいんだ。
希死念慮に取り憑かれた彼はことあるごとにそう言う。ベッドの上から枯れ枝のような手を伸ばして、あたしの腕を掴むのだが、伸ばしっぱなしの爪が皮膚に食い込んで痛い。
「やめてよッ」
毎度のように叫んで振り解く。棒切れがシーツに沈む。
もう終わりにしたいんだ。
彼はそう言って涙を流した。
どうして、どうしていつも貴方はそうなのよ……。
心の病が悪化して、会社を解雇され、人生を悲観した彼。
そんな彼をずっと支えてきた。パートも三つかけもちで、何とか二人が暮らしていけるお金を稼いできた。
どれだけ小さな幸せでも、貴方さえいればと思って、必死に頑張っているのに。
どうして貴方はそんなことを言うの。
私はこんなに貴方と生きていたいと言っているのに。
貴方はどうして死のうと言うの。
それも、二人で死のうと。
あたしを巻き込んで。
どうして、あたしを不幸にしようとするの?
その瞬間、あたしの悲しみは抑え難い怒りに変わった。
頬のこけた彼の顔に思いっきり枕を押し付けて、無慈悲な言葉を放つ。
「ひとりで死ねよ」
1/6/2024, 10:36:48 AM