橙色

Open App

「LaLaLa Goodbye」

 「じゃあな」
 「うん。またね」
 別れ際は、思っていたより二人ともあっさりしていた。懐かしい日々を振り返るでもなく、お互いを罵り合うでもなく。でも、きっと、相手が必死に平静を装っていることは両者とも分かっているだろう。だから。
 「ら〜らららららら〜」
 お気に入りの恋の歌を口ずさみながら彼の背中を見送る。
 「ららら〜らら、ら…」
 背中が小さくなっていくにつれて、だんだん声が震え出してきてしまう。もう少し、まだだめだ。
 「ら、ら………」
 とうとう見えなくなった。ふっと足の力が抜け、その場にしゃがみ込んだ。拭っても拭っても涙が溢れてくる。
 「いつか、また、きっと……」
 きっとまた会える。また言葉を交わすことができる。
 そう信じてるから、「さよなら」とは言わなかった。

10/13/2025, 1:58:42 PM