『一輪の花』
色褪せた物に、同じような仮面をつけた人間達。
目は垂れさせ、異様に釣り上げた口を見せながら紡ぐ言葉は全て薄っぺらい。
―――いやぁ…本当に素晴らしい!《もっと近づいて有名に…》―――
――なんて素敵なのかしら!ご一緒にお茶をしていただきたいわ《この人と結婚したら、玉の輿!玉の輿っ…!》――
見え透いた世辞に、耳障りな甘ったるい声が余計俺の世界を灰色に染めていく。
何故皆こう笑うのかわからない。
俺には当たり前の事すら皆にはわからない。
物事全て一度聞けば簡単に学べるのに、感情に関しては何度言われたってわからない欠陥だらけ。
「なんとなくでもいい。お前にだって綺麗だなって思う花があるでしょう?まずはそこから見つけて、なんで自分はそれを選んだのか考えてみればいいんじゃない?」
自分には感情が無い。なんて、零した言葉に彼女平然と生け途中の花を指さす。
不意に見せた彼女の何気ない微笑みに視線が彼女から離せなくなる。
俺、最近こういう事が多い。
いつも真剣に生ける彼女の姿と、彼女が生ける花をみるとよくわからない感情がざわついて、説明出来ないモヤモヤが広がってどうしたら良いかわからない。
「そんな事からわかる?なら…。」
彼女が綺麗に切った色とりどりの花。
その中から星の形をしたの気高く凛とした紫の花を一輪手に取る。
桔梗。
今は分からなくとも、彼女と同じ名前の花は自分の何かを変えてくれる。
そんな気がする。
2/24/2025, 12:37:41 PM