▶63.「今年の抱負」
62.「新年」
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1.「永遠に」近い時を生きる人形✕✕✕
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「これから…」
✕✕✕にしては珍しく、途方に暮れたような声が出た。
ナナホシは聞いているのかいないのか、
脚を使って体の手入れに勤しんでいる。
今まで旅をしながら、ほどほどの距離感で人間を観察してきた。
ただただ、データを集めてきた。
博士の遺した問い『人間とは何か、自由とは何か』に答えるために。
だが、その答えを受け取るべき博士は、旅立つ前に死んでいる。
そのことに、今ここで向き合わなくてはいけない。
人形は、そう感じていた。
なぜ、博士は人形に託したのだろう。
穴あきばかりで中途半端な記憶を残したのだろう。
「どうして、先に死ぬと分かっていて、」
人形は一度言葉を詰まらせたが、抑えられぬというように続けた。
「私を目覚めさせたのだろう…」
発する声がだんだん小さくなっていくと共に、目線も下がっていく。
「探ソウヨ」
その先には、いつの間にやら手入れを終えたナナホシが、
ごく小さな眼を人形に向けていた。
「イレフスト国デハ、新年ニ目標、立テル」
「ああ、それならフランタ国にもある」
「ドウセ僕タチ、先ガ長イ。少シ、自分ノタメニ寄リ道シヨウ」
「寄り道…」
「ソウ、寄リ道。博士ノ痕跡ヲ、探シニ行コウ」
博士の、痕跡。
あの人は、意味のないものを残すだろうか。
否、そんなことはしないはずだ。
では、本当は何を残したかったのだろう。
✕✕✕が膝をついて手を差し伸べれば、
ナナホシはすぐに乗ってきた。
「一緒に探してくれるのか」
「モチロン」
「…ありがとう」
するりと出てきた礼の言葉に、
常よりも熱を感じた✕✕✕だった。
1/3/2025, 9:46:27 AM