しぎい

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夕飯は彼の好物のエビグラタンにした。
当初は入浴を面倒くさがっていたのだが、子供というのはなかなかどうして現金なもので、好物でつったらさっそく衣服を脱ぎ散らかして風呂場に向かった。男の息子もそのような嫌いがあったが、ここまでではなかった。
寝仕度を全部済ませたあとで、DVDプレイヤーが映し出す特撮ヒーロー物の大げさな爆発やCGの光を浴びながら、うつらうつらと眠りこける彼にタオルケットをかける。室内の空調は常に完璧の状態を保っているが、クーラーの冷気で万が一風邪を引かないとも限らない。
六歳児行方不明のニュースが、男が持つスマートフォン上に映し出されている。男はそれを対岸の火事のように流し読んだ。友達と別れて以降、全く足どりが掴めていないのだとか。
それはそうだ。男は人気がないところで細心の注意を払い、薬で眠らせてから車で拉致してきたのだから。友達と別れて気もそぞろの彼に背後から近づき連れ去るのは簡単だった。
画面上のニュース映像には、さめざめとなく母親と、その妻を支える夫の理想的な夫婦像がある。罪悪感をきちんと持ち合わせている男は何となくはなじろんだ。
だが、今彼が頼れる大人は俺だけなんだ、という実感も同時に湧いてきた男は喜びを噛み締めた。

5/13/2025, 9:36:46 AM