自分より一回り小さい手を繋いで波打ち際を歩く。
まだ日中は日差しが暑いのに夏休みを終えた海は殆ど人がいなかった。
陽の光を受けてキラキラと輝くどこまでも続く波を見ていると、ほんの少し現実を忘れられる。
このままこの世界に2人だけ、いつまでもずっと一緒にいれたら良いのに。
そんな非現実的なことを思いながら歩いていると「あっ」と彼女が声を上げて白い砂浜から何かを拾い上げた。指で摘まれた小さいそれを大事そうにハンカチに包んで鞄に入れた。
自分より一回りも二回りも小さい小さい手を繋いで波打ち際を歩く。
何かを見つけてしゃがみ込む。
「きれいだねぇ」
「君はママ似だね。ママも好きだったんだよ」
砂浜に座って私たちを笑顔で見ている彼女の首には、あの時拾った貝殻のネックレスが輝いていた。
#貝殻
9/5/2022, 12:17:25 PM