お題《鏡》
桔梗の花があしらわれた、白銀色に輝くアンティークの鏡。
その鏡に宿された想い。
その鏡にひそむ悪夢。
古より、現在に受け継がれる――。
今日も閑古鳥が鳴いている。
瓶詰めにされて置いてあるのは森から採取した月光を浴びた石、一夜だけ花開く夜想花、朝露纏う布、希少な本の紙切れ。透明な泉の水に浸されたそれは、現代の魔法使いにより依頼されたもの。
まれに、過去の魔法使いの依頼もある。
使い古されたポットには朝露と妖精の果実で淹れたお茶が、ゆるあまい香りを漂わせている。
硝子の器には青い花の砂糖漬けが入っている。透き通ったあまい香り――これもまたここの主(あいつ)の好きなものだ。依頼の報酬はお茶と菓子。珍しいものから王道なものまで――つまり、なんでもありなのである。
「相変わらず本本本――依頼の報酬は茶と菓子。主は歪だねぇ」
これは最高の褒め言葉だ。
扉がギィ……と開く音がした。鏡の中から出ることなく少年は、爽やかに毒を吐く。
「やあ主。今日はどんなガラクタを買ったの?」
8/18/2022, 11:40:07 AM