たーくん。

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もう一歩だけ、前へ進むことが出来たら世界が変わるのに。
だけど、僕はいつも一歩後退してしまう。
前へ進まなきゃ始まらないのは分かっている。
でも……気持ちが前へ進まないんだ。
「お前は引っ込み思案で、いつも後ろにいるな」
父さんが、珍しく僕に声をかけてきた。
一緒に暮らしているが、あまり会話をしないので少し身構えてしまう。
「父さんもな、昔はそうだった。やりたいことがあっても前へ進めず、諦めることが多かった。何年か経って、あの時ああしとけばよかったと後悔したよ。だからお前も、父さんのように後悔しないよう、やりたいことはやっていけ。人生は一度きりだ。行き詰まったら相談に乗ってやるから」
父さんの話を聞いて、しばらく声が出なかった。
まさか父さんからそんなことを言われるとは思わなかったから。
父さんも、苦労したんだ……。
「ありがとう父さん。僕、頑張ってみるよ」
「ああ」
僕の返事を聞いて、微笑む父さん。
これならもっと早く相談しておけばよかったかもしれない。
……よしっ!
父さんのおかげで、僕はいつもより、少しだけど、一歩前へ進むことが出来るようになった。

8/25/2025, 10:20:16 PM