深く……、息を吐く。
身体を清め、純白の着物に袖を通し、純白の袴を着ける。
小袖に白い襷を掛け、腰帯に一口の刀を差す。
今日も……和多志は、人を殺める。
死刑執行人として、死罪人の最期に立ち会う。
……丁寧に、……相手を死の苦しみを和らげるように。
刀を振り下ろす速度……込める力……刃の角度……を寸分の狂い無く、
首の皮一枚残し、刀を抜く……其の瞬間まで、相手の身体に合わせる。
僅か、一瞬。
其の一瞬で、相手の最期を…、人生を…、変えることが出来ると思う。
例え、地獄のような苦しみの人生だとしても……。
最期だけは、苦しみを和らげられる。
相手を安らかに眠れるように……、人として最期を迎えられるように。
相手の最期を見届け、自らの手で奪った命を生涯背負う。
……其れが、和多志に出来る、唯一の弔いだった。
9/8/2023, 4:05:01 PM