駅前で待ち合わせ。
遅れてやって来た友達が、開口一番、
「すぐそこでさ、お前を探してる女性に会ったんだけど。身に覚えある?」
「僕を?どんな女性?」
「綺麗な人だったよ。二十歳くらいかな」
「それは光栄だね。最近あんまり探してもらえなくなってたから」
「お前、そんなに派手なカッコしてるのにな。見つからないもんだな」
「周りに溶け込むのが上手いんだよ、僕は。こんな雑踏の中なら、特にね」
「その女性も探すのに苦労してるようだったよ。ここにいるよって教えてあげたくなった」
「それをしちゃブスイってもんだよ。日本語合ってる?」
「無粋、な。合ってるよ。いやでもさ、見つからなくてホントに困ってるみたいだったからさ。眉間にしわ寄せてスマホとにらめっこしてた」
「それはそれは。美人が台無しだね。僕を探すのを楽しんで欲しいんだけどな」
「それにしても、なんでお前みたいな普通のメガネくんを探すのが流行ったんだろうな、あの頃」
「さあね。僕はただ、人混みに紛れてただけだからね。ここにいるよってアピールはしてたけど」
「そんな、サンタクロースみたいな格好でな。待ち合わせしても絶対に見つける自信があるよ」
「そう思ってても難しいみたいだよ。あ、そろそろ時間じゃない?飛行機に乗り遅れるとマズイよ」
「そうだな、行くか。今度はいつ日本に来るんだ?」
「さあ…どうかな。また僕が日本でブームになるようなことがあれば、お忍びで来たいとは思うけど」
「そん時は、彼女やワンちゃんも連れてな。おじいちゃんもイギリスにいるんだっけ?」
「うん。オドローも先に帰ってる。あっちでは今もまだ人気者だからね、僕達」
一人の女性が駅の改札を抜けて出てきて、僕を見て驚いた顔をしてる。
彼女が僕を探してくれていた女性か。
確かに綺麗な人だ。
これからも僕を探して欲しいな。
それが僕の生きがいだから。
「よし、じゃあ行くか。また会おうぜ、ウォーリー」
3/15/2025, 1:27:54 AM