"勿忘草(勿忘草)"
昔、一度だけ見たことがあった。
青い小花の合弁花
中央の黄色が合わさったのが綺麗で、見惚れていたのを覚えている。
それを思い出したのが、息を切らしながらこちらを見遣っている君の手に握りしめられたのを見たからだった。
様子からして、走って来たのだろう。
風圧やらなんやらで草臥れている花も相まって確信できる
私に渡す為に持って来たらしいが、差し出した瞬間にそんな様子に気づいたらしい。ハッとした後に恥ずかしそうに手を引っ込める
私は君を知らない
けれど、なんとなく受け取りたくなった
完全に手を引っ込められる前に私は腕を伸ばして、優しく花を受け取った。
強く、強く握られたそれは確かに疲れているようだけど
確実に、美しい物だった。
花を受け取った私を見て、はくはくと口を動かしている君を見る。
私にはもう何も聞こえない。
耳鳴りがして、君の声を拾うことを邪魔されている。
酷くもどかしい。何を伝えたいのか、どんな声をしているのか。今の私には理解することは叶わない。
一度顔を伏せた君は、それでもばっとこちらを見て笑う
百面相する君がとびきり愛おしく感じた。
今日もまた、勿忘草の花弁が降る
誰からかなんて、明白だった。
2/2/2026, 11:26:51 AM