ないものねだり
“誕生日に欲しいものはあるか?”
メールの文章と共にスタンプが送られてきた
祖父からだった
かなり歳のはずなのに、
あっさりとデジタルを使いこなせるとは…
さすが祖父だ
「欲しいもの、か……」
今は物欲がなかった
それどころか何に対しても興味が湧かないのだ
いわゆるスランプというやつだろうか?
だが、ひとつだけ欲しいものがある
それは『才能』だ
私のクラスメイトはみんな得意なことを持っている
絵を描くこと,スポーツをすること,演奏すること……
しかし、私にはみんなのように自慢できることが
何一つとしてないのだ
勉強もあまり得意なほうではないし、
容姿も華やかではない
超がつくほど凡人だ
だから才能がほしい
才能は人にもらうことができない
そうわかっていてもなぜか求めてしまう
“才能かな笑”
ダメ元でそう送ってみた
冗談のつもりだったが、祖父はちゃんと返事をくれた
“才能かぁ…わしには何にもないのう”
“だがな、わしは才能なんていらんと思うよ”
“え?”
“才能があればいい仕事にも就けるかもしれんがな、
きっと大変じゃよ。おんなじ才能を持った人に抜かれんように必死にならんといけんし、才能に自惚れて他の
選択肢が見えんようになるかもしれん
だからわしはいらんと思うよ”
……そっか
“おじいちゃん、ありがとう”
“また決まったら教えてくれい”
“うん”
やっぱり特別な才能なんかいらないんだ
ないものねだりしたってしょうがないもんね
また祖父に元気をもらえた
3/26/2024, 1:18:31 PM