燈火

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【friends】


彼女に振られた。いや、なんで振られたんだ僕は。
野次馬の視線が刺さる中、僕は呆気にとられていた。
本当なら僕から別れを告げてやるつもりだった。
だって、悪いのは浮気をした彼女だから。

証拠写真を見せて謝られたら許す気もあったのに。
写真を見せた途端、豹変した彼女に逆ギレされた。
罵詈雑言をまくしたてた挙句、去っていった彼女。
受け入れがたい現実に、脳が理解を拒んでいる。

ひとまず居心地の悪いその場を逃げるように離れた。
落ち着いて整理をするが、やはり意味が分からない。
どう考えても彼女が僕を振るのはおかしくないか。
僕が悪いとか言われたけど、僕はただの被害者だろ。

なんて、不平不満を抱えてもすべては済んだこと。
僕にできるのは、彼女の私物を処分することぐらい。
部屋中の物を集めたら山のようになってしまった。
こんなに物が溜まるほど長い時間を共にしたのだ。

思い出が浮かんでは消え、しんみりと感傷に浸る。
ふと豹変した彼女を思い出し、またムカついてきた。
あんな女のことなどさっさと忘れてしまえ。
そうと決まれば。僕は最適な場所を知っている。

そう、猫カフェだ。気まぐれな猫様の楽園だ。
今日は珍しく近寄ってきてくれて、最高に癒される
「お、お前ら……! 優しいな、おま──痛っ!」
撫でようとしたら威嚇され、引っかかれた。

しょんぼりと手を引くと、別の猫が来て傷を舐める。
こいつ、さっきまで上で追いかけっこしていた猫だ。
相手の猫を探すと、まだ上にいて体を伸ばしている。
可哀想に。お前も相手にされなかったんだな。

10/21/2025, 8:10:09 AM