三日月

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眠れない程

片思いしている女性がいる。

可笑しいと思うかもしれないけれど、最近その子が夢にまで出てくるようになった。

僕にはもう隠れる場所がなくなっていて、のがれられなくなっている。

それ程、僕の彼女への想いは強く、一息つく暇すらなく、夜も眠れない程、四六時中彼女のことばかり考えてしまう。

次の日の仕事に支障をきたすので、眠れるようにと、ホットミルクを飲んでみたり、夜にランニングをすることもあったけど、特に効果はなかった。

いっそ、睡眠薬でも処方して貰えたら寝れるんじゃないかと思うけれど、流石にこんな理由で病院通いするのはと躊躇い、それはできていない。

彼女のことを好きになったのは高校生の頃のことだった。

クラス替えがあった二年の頃、その子と一緒に文化祭で買い物する係になり、一緒に必要な物の買い出しに行く度、少しずつ会話が増えていき、気付けば彼女がアニメ好きだったことから会話が盛り上がり、二人の距離が縮まり仲良くなる中で惚れたのを覚えている。

時々、買い物がてらここのカフェのコーヒーが美味しいんだよとおしえてくれて一緒にコーヒーを飲みに行ったよね、それも、放課後の買い出しの後、直ぐ学校の教室に戻らないと行けないのに·····他にも、二人だけで、お腹空いたねと言って寄り道をして百円マックを買って食べたりしたね。

そんな二人だけの時間がなんだか僕には特別な時間に感じていたので、買い出しは楽しくて仕方無かった。

その後、三年生になってからも僕達の仲は相変わらずで、二人で帰ることもあれば、二人だけで遊ぶこともあったっけ。

僕は何だかそれがデートのようでワクワクドキドキ四六時中していたけど、君は僕との関係は友達っていう認識だったから、特に一緒に過ごしていても手を繋ぐなんてことは一切なく、本当に割り切っていたよね。

でも、いつか君が僕の手を握りしめることがあるんじゃないかって勝手に期待していたんだ。

分かっていたことではあったけど、結局何にもないまま卒業して、僕達は別々の大学に進学していき、それっきり連絡も取らなくなったね。

それから人伝に聞いた話では、君は何人かの人と付き合っていたようだし、僕も大学を卒業する迄の間に何人かの女性と付き合きあった。

けれど、大学を卒業してから、フリーになった僕は高校時代に出会った君が忘れられていないのだろうか、突然夢に出てくるようになったんだ。

それからというもの、眠れない夜がつづいている。

ところが僕は臆病者なのだろう、まだ連絡先が登録したままなのに、君に連絡出来ずにいた。

勇気をだして告白さえすれば、そして、振られさえすれば、また眠れるようになる筈なのに··········。

ところが偶然街中で君を見つけ、僕は声を掛けてみた。

何年ぶりだろうか、高校卒業してからだからかれこれ四年ぶりといったところだろう。

「久しぶりだね、僕のこと覚えてる?」

「うん、覚えてるよ、あの時買い出し行った帰りにこっそり二人でハンバーガー食べに行ったりして楽しかったね」

「うん、僕も楽しかった。  実はあの時僕は君に片思いしてたんだよ」

そう言うと、彼女は驚いた表情を見せた。

「そんなの、全然知らなかったよ」

ニコッと微笑みながらそう答える。

「ねえねぇ、彼女とかいるの?」

「今は居ないかな··········そっちは?」

「別れたばっかでいない、一緒だね」

そう言うと、彼女は笑った。

「ねぇ、今度一緒に遊ばない!」

突然、思いがけず彼女の方から誘ってきた。

「うん、いいよ」

僕がそう答えると、彼女は何だか嬉しそうだった。

それから、今日時間があるなら一緒にカフェにでも行かないかと誘おうとしたけど、彼女は時間が無いらしく、「また今度ね!」と言われて別れることに。

その後、彼女からメールが来て、僕達は今度の週末一緒に映画を観に行く約束をした。

人伝に聞いた話では、君は彼氏は当分要らないと言っていたようなので、この先進展があるのが、友達終わりなのか予測がつかないでいる。

お陰で、君とあってからもまだ眠れない夜が続いていた。

可能は0では無い、僕が倒れる前に、勇気を出してか告白したいと思ういます。


12/6/2022, 3:01:29 AM