はいこれ、と差し出されたのは、青いリボンでラッピングされた、手のひらサイズの小さな箱。
「なにこれ」と訊けば、白石はにっこり笑って「ハッピーホワイトデー」と言った。
「はあ?」
「いいからちょっと開けてみて」
わけがわからず顔をしかめる俺に、白石は箱を押し付けてくる。俺は怪訝に思いながらも受け取って、リボンをほどき、箱を開けてみた。
中にぴったり収まっていたのは、ハート型のチョコレートだった。上には溢れんばかりのスターシュガーが散らばっている。見るからに甘ったるそうなそれを見下ろし、俺はふたたび「なにこれ」と言った。
「何ってチョコだよ。見りゃわかるだろ」
「そうじゃなくて……これお前が作ったの?」
「うん。お前のために夜なべして作った」
「なんで」
「ホワイトデーだから」
「ホワイトデーは昨日だ」
「あれっ、そうなの? 今日だと思ってた」
今日だと思っていたんだとして、なんでお前が俺のためにチョコを作って渡すんだ。もちろん俺は、こいつにバレンタインチョコを贈った覚えなど一切ない。
「ホワイトデーって、バレンタインに貰ったチョコのお返しをする日なんじゃないのか」
「そうだけど」
「俺はお前に何もあげてない」
「でもほら、俺ってこういうイベントには積極的にあやかってくタイプじゃん?」
知らねえよ。そんなにあやかりたいならその辺の女と交換こでもしとけ。そう言いたくなったが、交換こできる相手がいるならそもそも、こんな奇行に走るはずもない。モテない男の末路がコレかと思うと、なんだか可哀想になってきた。
ため息をついてから、仕方なく「わかったよ、食べてやる」と言えば、白石はぱっと表情を明るくした。
「食べて食べて。隠し味は俺の愛情♡」
「食欲失せるからやめろ」
気色の悪いことを言ってくる男を軽くあしらって、ふたたび手元を見下ろす。星がたっぷり乗っかった、ハートのチョコレート。これを作ったのが可愛い女の子だったなら、喜んで食べたのに。
人の気も知らず、生産者は嬉しそうにニコニコしている。なにがそんなに楽しいんだか。変な奴。
【テーマ:星が溢れる】
3/15/2026, 12:44:21 PM