高校を卒業したら、友人はみんなここを出ていくと言う。
友人だけではない。同級生の多くはここを出ていく。
仕事がないから。給料が安いから。進学のため。田舎の人間関係が嫌だから。
残るのはどのくらいいるのだろう。少なくとも、よくつるむグループで残るのは彼女ひとりだけだ。
二両しかないのにガラガラの電車に揺られての帰り道。向こう側の窓には朱い太陽と雲、遠い稜線と田畑があった。
黒い影の電柱は視界からサッと消えていく。その一方、太陽はどっしり構えて変化に乏しい。
春、土が見えていた田は機械に耕されて水鏡となり、夏になった今は稲が草原のふりをして青々とした葉をさらに伸ばそうとしている。
みんなが、何もないと言う風景。
でも、ほんとうに何もないなんてことはない。
生まれたときから当たり前にあるから存在感が消えているだけ。空気と同じだ。
電車に揺られながら、窓枠越しに景色を見るようになって二年と三ヶ月。移ろう景色が連作の絵画ようだと感じたのは一年と少し。これを見られなくなるまであと半年程。
日に日に強くなる寂しいさから、一秒として同じもののないものを目に焼きつけるように外を眺め続けた。
7/1/2024, 9:21:17 PM