︰静寂に包まれた部屋
静寂に包まれた部屋で、幼い頃習った童謡『チューリップ』を鼻歌でゆったり歌ってみる。
穏やかなあの頃。仲良く、喧嘩もなく、真っ直ぐありのまま生きてた頃。
幻想
あの頃から生きるのが怖かったよ。
一人で部屋に引き篭もるのがあの頃から好きだったよ。
静寂に包まれた部屋で過ごすのが好きだったよ。
窓辺の埃が太陽の光でキラキラと輝いているだけの、窓の向こうの雲がただゆっくり流れていくだけの、なにもない時間。
星が瞬く夜、カーテンを閉めて真っ暗になった天井に家庭用プラネタリウムで映し出してもらった、ただ、それをクルクル眺める時間。
ただ、寝ぼけ眼で、ほとんど夢の中にいながら、そこにいない貴方を探していた。しんと静まり返った夜の部屋は不気味で、暗く何も見えず、心細く、手探りでベッドから降りて歩いた、冬の足の裏の冷たさを、私は今でも愛おしいと思っている。
温かくなることを知っていたから、無下にされるはずがないと自信に溢れていたから、抱き締めてくれることを知っていたから。私は怖くなんてなかったのだ。恐れなど知らなかった。貴方が私を愛してくれたから。
あの部屋で生きた、あの部屋で眠った匂いを、私はもう思い出せもしないというのに。貴方がどんな顔をしていたのかも思い出せないというのに。
貴方の心など今更想像もできなければ補いもできやしないまま。ただ損なえないまま。
4年だ。貴方が注いでくれた4年の愛情が私の心なのだ。
親愛なる貴方へ どうか。
9/29/2024, 6:49:19 PM